『ニーア レプリカント』と『ニーア オートマタ』に登場する、赤い髪の双子「ポポル」と「デボル」。村で主人公を支える優しい二人と、レジスタンスキャンプでどこか肩身の狭そうな二人を見て、「同じ人物なの?」「なぜ謝り続けているの?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
二人を理解する鍵は、人類を救うための使命と、同じ型であるがゆえに背負わされた責任にあります。この記事では、まず両作品の関係を整理し、そのうえで各作品の役割と背景をたどります。
本記事は『NieR Replicant』(ver.1.22474487139…を含む)と、ゲーム版『NieR:Automata』の終盤・人物の正体・結末に触れます。未クリアの方はご注意ください。アニメ版独自の展開は扱いません。
最初に整理:両作品のポポルとデボルは「別の個体」
結論からいうと、『レプリカント』の二人が、そのまま生き延びて『オートマタ』に登場するわけではありません。デボル・ポポル型は、人類の計画を管理するために複数の組が用意されたアンドロイドです。名前や外見が共通していても、各地で活動していたそれぞれの組には、別々の経験があります。
見分け方の目安は髪形です。ウェーブがかった髪がデボル、ストレートの髪がポポル。ゲームを思い返すときには、『レプリカント』で歌っている姿が印象的なデボル、図書館で相談に乗ってくれるポポル、と覚えると整理しやすくなります。髪形の区別はアニメ公式の人物紹介でも確認できます。
| 比較する点 | レプリカント | オートマタ |
|---|---|---|
| 登場する二人 | 主人公の村を見守る一組 | 別の場所で活動していた同型の一組 |
| 表向きの役割 | 村や主人公の暮らしを支える | レジスタンスで整備・治療などを担う |
| 背景にあるもの | ゲシュタルト計画の管理という使命 | 同型機の失敗への連帯責任と罪悪感 |
| 終盤の立場 | 主人公の前に立ちはだかる | 9Sが先へ進むのを助ける |
この「別個体なのに、過去の出来事から逃れられない」という関係が、二つの作品をつなぐ重要な部分です。個体と型の違いについては、NIER Wikiのデボル解説でも整理されています。
『レプリカント』での役割:村の支えであり、計画の管理者

主人公にとっては、身近で頼れる大人
物語の序盤、デボルとポポルは、妹ヨナのために働く主人公を支える存在として登場します。デボルは村で歌を奏で、ポポルは図書館を拠点に情報や仕事の相談に応じます。危険な場所へ出かける主人公にとって、二人がいる村は日常へ戻れる場所でもあります。
ここで大切なのは、最初から恐ろしい敵として描かれているわけではないことです。プレイヤーは二人の言葉を頼りに旅を進め、ヨナを救う手がかりを探します。その積み重ねがあるからこそ、終盤で明かされる正体と対立が重く響くのです。村での立場や物語の流れは、NIER Wikiの作品解説にまとまっています。
本来の任務は「ゲシュタルト計画」を維持すること
二人の正体は、人類を存続させるためのゲシュタルト計画に関わる管理用アンドロイドです。人間のように暮らしている村人と、村を管理する二人は、実は同じ種類の存在ではありません。
計画の出発点は、人類を脅かした白塩化症候群への対処でした。難しい用語を大まかに分けると、次のようになります。
- ゲシュタルト:肉体から分離された、人間の魂にあたる存在。
- レプリカント:将来、その魂を戻すために用意された肉体。
- 管理するアンドロイド:長い時間にわたり、計画やレプリカントを見守る存在。
たとえるなら、危機を避けるために「人間の魂」と「帰る先の体」を別々に保ち、いつか再び一つに戻す計画です。ただし、これは仕組みを理解するための簡略化であり、実際の物語では多くの問題が生じています。計画の概要はNIER Wiki「Project Gestalt」を参照してください。
計画を狂わせた、レプリカント自身の心
大きな問題は、器として用意されたレプリカントが、自分の心や意思を持つようになったことです。主人公やヨナにとって、自分たちの暮らしは誰かが戻ってくるまでの仮住まいではありません。家族を愛し、痛みを感じ、明日を生きたいと願う、かけがえのない人生です。
一方、主人公たちが「マモノ」と呼ぶ存在は、ゲシュタルトと結びついています。また、ゲシュタルトの崩壊と、対応するレプリカントに現れる黒文病にも関係があります。つまり、村を襲う脅威とヨナの病気は、別々の問題に見えて、計画の根本にまでつながっているのです。レプリカントの自我や黒文病の仕組みはNIER Wiki「Replicant」で説明されています。
この構造を踏まえると、二人の管理者としての立場が見えてきます。「人類のために計画を成功させたい」という目的は、目の前で生きているレプリカントの意思を尊重することと、必ずしも両立しません。主人公を助ける言動と、主人公を計画へ導く言動が、同じ行動の中に重なっているのです。
なぜ『レプリカント』では主人公と戦うのか
主人公の最優先事項は、ヨナを取り戻すことです。しかし、デボルとポポルには、ゲシュタルト計画を守る任務があります。魔王は単なる討伐対象ではなく、ほかのゲシュタルトを安定させるうえで重要な存在でした。その魔王へ主人公が迫ることで、両者の目的は決定的に衝突します。
二人が立ちはだかる理由は、主人公が救おうとする家族と、二人が救おうとする人類が、同じ選択では救えなくなったと捉えると対立の意味をつかみやすいでしょう。
やがてデボルが倒されると、ポポルは激しい悲しみと怒りをあらわにします。エミールが仲間を守ろうとする展開も含め、この場面では、計画を管理する冷静な立場よりも、大切な相手を失った感情が前面に出ます。戦闘と二人の最期についてはNIER Wikiのポポル解説に記載があります。
ここからは物語の読み取りですが、ポポルもまた、主人公と同じように「大切な一人を失いたくない」存在として描かれているように感じられます。対立する側同士なのに、相手を動かしている感情は自分と遠くない。その重なりが、この戦いを単純な悪役退治では終わらせません。
なお、二人だけを人類滅亡の原因と断定するのも適切ではありません。レプリカントの自我、ゲシュタルトの問題、魔王や主人公の行動など、複数の事情が重なって計画は破綻します。魔王の死は、人類存続の見通しを決定的に失わせる出来事ですが、その瞬間に世界中の人類が一斉に消滅する、という意味ではありません。魔王と計画の関係は作品全体のあらすじでも確認できます。
『オートマタ』での役割:過去の責任を負わされた支援者

レジスタンスキャンプで働く、別の二人
遠い未来の『オートマタ』では、同じ名前とよく似た姿の二人に出会います。彼女たちはレジスタンス側の旧型アンドロイドで、整備や治療などの支援に関わっています。主人公の村を管理していた二人とは別個体です。
ところが、周囲の態度は温かいものばかりではありません。二人は冷遇され、危険な仕事まで引き受けています。プレイヤーが依頼や会話に触れるにつれ、単に気の弱い二人なのではなく、そう振る舞わざるを得ない背景があると分かってきます。キャンプでの仕事と扱いはデボル・ポポルの人物解説にも整理されています。
自分たちの失敗ではないのに、なぜ償うのか
ゲシュタルト計画の破綻後、非難は当事者の一組だけでなく、デボル・ポポル型という型全体に向けられました。『オートマタ』の二人も、その責任を負わされた側です。ここで区別したいのは、「同じ型であること」と「同じ行動をしたこと」は別だという点です。
さらに残酷なのは、記憶の処理と、罪悪感を生じさせるようにされた仕組みです。二人の苦しみは、過去を普通に思い出して後悔しているだけではありません。計画に関わる記憶を消されながらも、罪悪感を抱くようにされていることが、終盤の記録と説明から明らかになります。詳しくは作中の記録「Devola & Popola’s Memories」の解説を参照してください。
言い換えると、二人は「自分が何をしたか」を十分にたどれないまま、「自分は償わなければならない」という感情に追われています。だからこそ、危険な仕事を受け入れ、人の役に立とうとする姿を、単なる献身として見ることはできません。
これは本記事の解釈ですが、型全体への非難は、相手個人を見ない差別の構図として読むことができます。二人が罪悪感を持っているからといって、周囲の扱いが正しかったことにはなりません。彼女たち自身の気持ちと、客観的に責任を負うべきかどうかを分けて考えると、この悲劇がより明確になります。
終盤では、9Sのために道を開く
物語の終盤、塔へ入ろうとする9Sを助けるため、二人は戦いに加わります。デボルが敵を食い止め、ポポルは塔への侵入を阻む仕組みに身をさらして、9Sが進めるようにします。その代償は重く、二人は命を落とすことになります。
のちにA2が塔の前へ到着すると、デボルは、自分たちが誰かの役に立てたかを確かめようとします。大きな使命を与えられ、長く責められてきた彼女たちの最後の願いが、誰かを助けられたという実感に向かう。そこに、この二人の物語の痛ましさがあります。塔での行動と結末はTwinfiniteのストーリー解説を参照してください。
二つの作品を並べると見えてくる、二人の悲劇
ここからは、描かれた出来事を踏まえた考察です。二人の立場は、作品をまたいで大きく反転しています。『レプリカント』では主人公の進路を阻み、『オートマタ』では主人公の一人である9Sの進路を切り開きます。同じ顔と名前が、プレイヤーにまったく違う感情を呼び起こす構成です。
ただし、これを「前作の二人が反省して味方になった」と理解すると、別個体であることの意味が消えてしまいます。『オートマタ』の二人は、前作の二人自身ではありません。だからこそ、その献身を過去の罪への当然の支払いとして受け取ることにも、ためらいが生まれます。
共通しているのは、使命のためだけには割り切れない心と、互いを失いたくないという思いです。管理者、支援者、あるいは失敗した型という分類では説明しきれない関係が、二人の間にはあります。「人間を守るためにつくられた存在」のほうが、愛情や喪失を強く感じさせるところも、ニーアらしい魅力でしょう。
「イニシエノウタ」が残す、日常の記憶
二人を語るうえでは、音楽も欠かせません。『レプリカント』の公式サウンドトラックには「イニシエノウタ/デボル」「イニシエノウタ/ポポル」「イニシエノウタ/運命」などが収録されています。曲名は公式トラックリストで確認できます。
歌と結びついた穏やかな印象を持っているほど、後の対立や別れは強く響きます。設定を理解してから村での場面や二人の会話を振り返ると、初見では安心して聞いていた言葉にも、別の重みを感じられるはずです。
ポポルとデボルを理解するために覚えておきたいこと
- 二人は人間ではなくアンドロイドで、両作品に登場する組は別個体。
- 『レプリカント』では村を支えながら、ゲシュタルト計画の管理者として行動する。
- 主人公との対立には、ヨナを救う目的と人類存続の使命が衝突する背景がある。
- 『オートマタ』では、同型機の失敗への非難と、与えられた罪悪感を背負っている。
- 終盤の献身は、二人自身が過去の失敗を起こした証拠ではない。
ポポルとデボルは、作品をつなぐためだけに再登場するキャラクターではありません。誰のために生きるのか、責任はどこまで引き継がれるのか、与えられた役割の中で生まれた心をどう受け止めるのか。二組の物語を続けて見ると、ニーアが投げかける問いが、より身近なものとして見えてきます。
シリーズ全体のつながりも整理したい方は、レプリカントからオートマタへはどう繋がる?時系列で解説もあわせてご覧ください。

